悩ましい問題(2)

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前回につづき、ダニのお話です。
2つめのダニ「アカリンダニ」は、現状主に日本ミツバチにおいて問題になっています。
ここ数年で日本各地に拡がっているということです。
アカリンダニはミツバチの気管に寄生する、肉眼では見えない小さなダニです。
寄生されたミツバチは、飛べなくなり徘徊するなどし、群は衰退していきます。
実は、神奈川の自宅の日本ミツバチ2群のうち、1群はアカリンダニなのかも…という症状が出た末、逃去してしまいました。
とても元気な群だったのですが、アカリンダニ対策である蟻酸の設置を「刺激が強くて逃げるのでは…」などと躊躇しているうちになんとなく勢いがなくなってゆき、飛べない子が出てきて「あれ、おかしいな?」と思っているうちにスムシ(ハチノスツヅリガというガの幼虫。ミツバチの群に勢いがあればあまり問題になりません)に巣をおかされてしまいました。
なんとかしようと、いろいろやってみました。
日本ミツバチたちには相当なストレスだったのでしょう…ある日、深まる秋の空へ、少ない蜂数で飛び立っていってしまったのです。
きっと冬は越せず、既に息たえてしまったことでしょう…。
ミツバチの行く末を思うとつらく、またさびしく、軽いペットロスのような状態になってしまいました。

飛べずにとりのこされた日本ミツバチ
飛べずにとりのこされた日本ミツバチ
ただ、巣をいじったりしても、日本ミツバチたちは攻撃してくることはありませんでした。
理解してがまんしてくれたようにさえ思えます。
日本ミツバチにはまだ一度も刺されたことがありません。
もう1群は越冬中です。
蟻酸は、設置しても蜂は嫌がりませんでした。
また、もうひとつの対処法であるメントールクリスタルを設置した人に聞いても、嫌がらなかったということでした。
日本ミツバチを飼っている方は、躊躇せずにぜひ早めの対策を…!
(蟻酸(濃度調整済)は会員になっている「信州日本みつばちの会」から購入しました。会員でなくても購入することができます。)
以前、「信州日本みつばちの会」でダニについての講演を聞きました。
元信州大学農学部教授(農学博士)の建石繁明先生によるお話でした。
大変興味深い内容でしたのでご紹介します。
驚くことに、地球上の生物の約7割はダニだそうです。
そのくらい多種多様のダニが土壌にもそこかしこにも存在しており、いくら避けているつもりでも、皆さんふつうにダニを食べていますよ…とのことでした。
元々ダニには天敵の虫がいたので、かつては農業においてもダニ被害で困るということは無かったそうです。
しかし、有機リン剤が原因で、天敵となる虫が死滅してしまい、ダニ被害が顕著になったそうです。
そして、そのダニを駆除する為にダニ殺剤を使うわけですが(農薬の24%がダニ殺剤とのこと)、ダニは必ず耐性をもつので、ダニに絶対効く薬というのは存在しないそうです。
さらに、メスが1匹でも生き残れば、そのメスがオスを産み、近親交配して増えるので、ダニがいなくなることは決してないそうです。
薬剤での対応は終わりのないいたちごっこということなのです。
また、人間が目の前の現象だけを解決しようとすることで、見えなかった部分のバランスがくずれて、新たな問題が生まれることもおおいにあるのだと感じました。
ミツバチにおいて、昔にはなかった問題が現れているのもそういうことが大きな一因なのではないかと思います。
講演の際にいただいた資料から、長くなりますが抜粋します。
「生物の中で必要のないものは自然淘汰される。
ということは、生息している生き物は全て生態系にとって必要のある生物ということになる。
ダニがいなくなったらどうなるかを考えてみたい。
落ち葉は、ダニがいなくなれば分解されずに蓄積されることになる。
落ち葉が堆積し、分解する事で森林の生態系が保たれて、いろいろな生き物がそれを利用している。
また、ダニを食べることで生活している生き物たちも生きていけなくなる。
ダニは種類も多く個体数も多いので、私たちの知らない役割がさらにあるかもしれない。
自然環境の保全には、自然環境の正しい理解が大切であり、そのための研究も進められなくてはならない。
めずらしい生き物やきれいな生き物に目を向けるばかりでなく、このように人知れずに、時として嫌われることもある生き物たちの存在に目を向けることも大切である。」

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