“生はちみつ”は、ミツバチの巣から採ったままの、何も足さない、何も引かない天然のはちみつです。
実は、日本で売られているはちみつの多くは、巣から採った後に加熱処理をされています。なぜ加熱されるのでしょうか?
その理由の一つは、ミツバチの巣からはちみつを採る時の効率アップのためです。
ミツバチは日中に集めた蜜を、羽であおいで水分をとばします。
そして時間をかけて糖度を80%近くにまで上げ熟成させると、はちみつの房にミツロウでフタをし、保存します。
そのため、朝、ミツバチが完全に作りあげてくれたはちみつを採るのが最良なのですが、蜜蓋を切り取ったり、糖度が上がって粘度の高いはちみつを採るのは手間がかかるため、夕方に、ミツバチが集めてきてすぐの水分の多いシャバシャバのはちみつを採る業者があるのです。
そしてそれを高温で加熱して水分をとばし、濃縮するのです。
特に中国から輸入されるはちみつには多いようです。
もう一つの理由は、海外から輸入される場合の事情によります。
海外から輸入されるはちみつのうち安価なものの多くは、ドラム缶に詰められ、貨物船によって運ばれてきます。
まず現地でドラム缶に詰める際に、詰めやすくするため加熱されます。
そして、場合によっては赤道を超えて高温にさらされ、何ヶ月もかけて日本に着き輸入許可がおりる頃には、はちみつは結晶しているため、ドラム缶から出される時にまた加熱され溶かされるのです。ある工場で直接聞いたところでは、60度以上の熱を加えるということでした。
そして瓶詰めの際には、機械内の結晶を防ぎ効率よく詰められるよう更に加熱されます。
また、日本においては結晶しないサラサラのはちみつが求められる傾向があることも、加熱処理して結晶しにくくさせる要因のひとつとなっているようです。
はちみつは45度以上の温度で加熱すると、風味や、ビタミンやミネラル、酵素などの栄養成分が損なわれてしまいます。
「生はちみつ」は、加熱処理をしない、ミツバチの巣から採ってそのまま瓶詰めした、本来のはちみつの恵みが生きたはちみつです。
身近で安価で売られているはちみつは、全てが本物のはちみつと言えるのでしょうか…?
実は加熱の問題だけではなく、日本においてはさらにまた特殊なはちみつ事情があります。
これは次回のコラムでお話しします。
2015.3
参考文献:
上之二郎(2003)『ミツバチが泣いている』集英社
川島茂(2007)『ハチミツの「危ない話」』三五館