私たちが口にするはちみつは主に「西洋ミツバチ」か「日本ミツバチ」が集めたものです。
ほとんどは、西洋ミツバチのものと考えてよいでしょう。
日本ミツバチのはちみつは、大量には出回らず高価なものです。
西洋ミツバチの故郷は、ヨーロッパからアフリカにかけての地域です。
一方、日本ミツバチは東洋ミツバチの一種で、日本在来種のミツバチです。
西洋ミツバチの養蜂の記録は紀元前数千年にまでさかのぼり、エジプト、ヨーロッパからロシアへ、そしてアメリカやオーストラリアへと渡っていき、養蜂の技術も進歩していきました。
管理のしやすい巣箱や、効率的にはちみつをとれる道具なども発明されました。
西洋ミツバチが日本に初めて運ばれて来たのは、明治10年(1878)です。
日本ミツバチは、平安時代の文献に養蜂の記録が残っており、日本独自のミツバチ飼育技術が培われていました。
江戸時代から明治時代には、その古式養蜂の文化が花開いていており、はちみつといえば日本ミツバチのものだったのですが、西洋ミツバチの導入にともない、日本ミツバチの養蜂は減少していきました。
それは、西洋ミツバチのほうが日本ミツバチよりはるかにたくさんのはちみつを集め、養蜂技術も効率的で生産性が高いためです。
現在、養蜂業といえば西洋ミツバチでの養蜂が一般的です。
日本ミツバチと西洋ミツバチが決定的に違うのは、「野生」であるかそうでないかということです。
西洋ミツバチは長い養蜂の歴史の中で、より多くのはちみつをとり、また管理がしやすいように飼いならされ品種改良されてきました。半ば家畜のようなものといってもよいでしょう。
一方日本ミツバチは野生のままです。
西洋ミツバチを飼い始めるには、既に飼われている蜂を買うのですが、日本ミツバチは、野生の蜂を巣箱に誘い込むことから始めるのです。
そんな両者は性格も体質も違います。
西洋ミツバチはよほどのことが無い限り、巣箱から逃げ出すということはありませんが、日本ミツバチは巣箱が気に入らなかったり、居心地が悪かったり、少しでも危険を感じたりすれば逃げてしまいます。
とてもデリケートなのです。
また、スズメバチ(ミツバチを襲います)が侵入してきたとき、日本ミツバチは大勢でスズメバチに襲いかかって球状になり、皆で発熱して蒸し殺しにします。
一方西洋ミツバチは、果敢に一匹ずつスズメバチに戦いを挑むのですが、次から次へと倒されてしまい、ついには群が全滅してしまうこともあります。
西洋ミツバチは故郷ではスズメバチに襲われることがなかったゆえの習性なので、気の毒ではあるのですが…
また、体にダニがついたとき、日本ミツバチはお互いにグルーミングしあってダニをとりますが、西洋ミツバチはそのようなことはしないようです。
西洋ミツバチがかかりやすい病気でも、日本ミツバチはかからなかったりします。
西洋ミツバチのはちみつももちろん美味しいですが、日本ミツバチのはちみつはまたとても味わいがあり、滋養を感じます。
趣味で日本ミツバチを飼っている人は増えていますが、これからは日本の風土に合った日本ミツバチの養蜂がまたもっともっとさかんになれば素晴らしいことです。
そのためには、ミツバチが暮らしやすい環境を作って行くことも急務です。
はちのわでも、トライしたいと考えています。
両者の見た目の違いですが、写真の右が西洋ミツバチ、左が日本ミツバチです。
日本ミツバチのほうが体が少し小さく、全体的に黒っぽい色をしています。
近くでミツバチを見かけたら、ぜひ観察してみてください。
2014.11
参考文献:
日本在来種みつばちの会(2000)『新特産シリーズ 日本ミツバチ』農文協
ダニエラ・シガ(2013)『はちみつ健康ジュース&料理』日本文芸社
養蜂振興協議会(2014)『ミツバチ飼育技術』