ミツバチたちは越冬モードに入り、できる作業もほぼなくなったので、ようやっと「ふぅー…」と一息ついていたら、そのまま自分もお休みモードに入ってしまい…すっかり更新が遅くなってしまいました。
例年11月は「もう冬だ!」という気温ですが、今年は寒くなったと思うとまた妙に暖かい日が続いたりと、過ごしやすいような、調子がくるうような毎日です。
ミツバチの越冬に何かイレギュラーな影響がないとよいのですが。
さて、前回少し触れました、はちのわのはちみつ「森のしずく」の残留農薬検査についてご報告します。
はちのわでは、抗生物質や化学合成のダニ駆除剤を使用しない養蜂を行なっています。
しかし、周辺環境で農薬が使用されていた場合、影響が及ぶ可能性があります。
はちみつの残留農薬検査は義務ではありませんが、周辺環境の影響の確認のため、また、より安心してはちみつを提供するため、検査に出すことにしました。
前回は養蜂をこの地で始めた2015年に「残留農薬一斉検査(115項目)」の検査を行い、全項目不検出でした(2015年検査結果PDF)。
この時は、はちみつに特化した検査サービスを見つけることができなかったのですが、今回、農民連食品分析センターさんがはちみつの残留農薬や抗生物質の検査を行なっていることがわかったので検査をお願いしました。
前回の記事でも書いたのですが、検査費は高額なので、個人養蜂家が毎回検査することは少々難しいことをご理解いただけますと幸いです。
検査費をはちみつの価格に上乗せするとなるとかなりの価格にもなってしまいますのでためらわれます。
行なった検査は以下の2つです。(抗生物質は不使用なので検査していません)
いずれの検査結果も全て「検出せず」でした。(グリホサート検査結果PDF・残留農薬検査131成分検査結果PDF)
ネオニコ系も出なかったのは、ミツバチのためにもほっとしました。
ただこれは、はちのわの蜂場がたまたま運がよかっただけかもしれません。
日本では無数の農薬が使用され、また「ラウンドアップ」を代表とするグリホサートを成分とした除草剤(「ラウンドアップ」は商品名、「グリホサート」は成分名。グリホサートを使用した商品はラウンドアップ以外にも複数あります)も堂々と販売され、誰でも簡単に購入できます。
そんな環境で、安心安全なはちみつを、と養蜂家が迫られるのには理不尽も感じます。
これっていわゆる「無理ゲー」というやつでは?…とすら思います。
今回、農民連食品分析センターの方とのやりとりで、年間通じてはちみつの検査を数多くする中で、農薬が検出されて肩を落とす養蜂家の方もいると聞きました。
自分のコントロール外のことで、丹精込めて育てたミツバチが作ったはちみつにケチがつくなんて、想像しただけでガッカリを通り越してしまいます。
農民連食品分析センターさんのコメント
「ラウンドアップは、本当にあちこちで使用されていて、その影響を受けずに養蜂をするのは、かなり難しいという実感を私どもも持つようになりました。
基準値を0.01から5倍の0.05に引き上げをやるという、ネガティブな方向の対応を政府はやりましたが、私ども施設の手応えとしては、この緩和でも、まだ違反になるハチミツはかなりの量に上る、ということが見え始めているところです。」
有害な薬なら堂々と市販されるわけがない、と思う方もいると思います。
実際に身近であった事ですが、家庭菜園は無農薬で作り、はちみつも健康のために毎日食べている、という人が、自宅周辺の除草にラウンドアップを使っていました。
この程度の意識の人はまだまだ多いのだろうな…と嘆息します。
また先日目にしたyoutube動画で、ある養蜂家の方が「薬を使っていない」と仰っていました。
しかしそれが「蜂場で除草剤を使っていない」という意味だったので、目がテンになりました。
「品質にこだわって猛暑日も草刈り」とのこと。それ当たり前です!
自分の蜂場に除草剤まく養蜂家がいたら、それはもうサイコパスじゃないか…と思うのですが、除草剤を使わないことが「こだわり」としてセールスポイントになるとは…。
それならはちのわなんて、「こだわり」どころか「こじらせ」ちゃってます。
ただこの養蜂場でも、周囲の田んぼに散布される農薬でミツバチが大量死したりと、農薬には苦労をされているようでした。
とまぁ、こういう事象に接すると、自分が苦心して安心なはちみつ作りを目指しているのって…一体誰のため?何のため?と虚しくなったりもします。
ラウンドアップのwebサイトをのぞくと「ラウンドアップは野生生物・鳥類・昆虫類にも極めて安全性が高く、世界の環境保護区や、世界遺産の保全に、広く利用されています。」とありました。
それなら安心ですね…って、それならば「はちみつにグリホサートが!」となぜ騒がれるのでしょうか。
ラウンドアップは「アミノ酸系で安全」「微生物により分解される」など、安全性がアピールされています。
でも一方「最高の枯らす力!」「葉から入って根まで枯らします」「さまざまな雑草に有効です」というセールスコピーが、そのまま「なんかこわいなー」と直感的に思うのも事実です。
植物を根こそぎ枯らしてしまうものが、本当に他の生き物に安全なのでしょうか。
米国ではモンサント社(現:バイエル社)に対して、がんを発症したとして民事訴訟が1万件以上起こされているそうですが…。
最近、某中古車販売店が、店の前の街路樹を除草剤で枯らしたということが話題になりました。
街路樹を枯らすほどの威力、もしくは大量に撒いたのかは不明ですが、この件でも土壌からグリホサートが検出されたそうです。
ちなみに使用された除草剤は有名な日本の製薬会社の商品だったようです。
世界的な流れとしては、グリホサートの使用や販売の禁止へと向かっている中、日本では残留基準値を大幅に緩和し、グリホサートを有効成分とする新商品も登録するなど、むしろ推進しているかのようです。
2017年、農林水産省により引き上げられたグリホサートの残留基準値の一例
- 小麦:5.0ppm→30ppm(6倍)
- ライ麦:0.2ppm→30ppm(150倍)
- とうもろこし:1.0ppm→5ppm(5倍)
- そば:0.2ppm→30ppm(150倍)
はちみつに関してはもともとはグリホサートの個別の残留基準値は設けられていませんでしたが、個別基準がない場合にはポジティブリスト一律基準0.01ppmが適用されるため、従来ははちみつにはその値が適用されていました。
これも5倍の0.05ppmに引き上げられました。
はちみつの0.05ppmというのは、他の作物と比較すると、値としてはかなりシビアではあるということは言えると思います。
そういう意味では、特に普段何も気にせずに食品を選んでいるような場合、はちみつだけに必要以上に安全性を求めることにはあまり意味がないのではないか…とは思います。
農薬や添加物などは、気にしなければ日常たくさん口に入れているわけですので…
もちろん残留を肯定しているわけではありません。
残留していないに越したことはないですし、ラウンドアップ撒かないで…と切に願います。
ホームセンターやJAのお店に行くと、たいがい目立つ場所にラウンドアップ専用の棚がドンと置かれています。
いつも不穏な気持ちになります。
なぜ食品に残留していると騒がれるような薬が、誰でも好きなだけ買えるような状態になっているのでしょう?
このような状況に消費者がもっと疑問をもってほしいと思っています。
そもそもグリホサートは、遺伝子組換え作物とセットのものだということも消費者は意識したほうがよいように思います。
遺伝子組み換えによって、グリホサートでも枯れない作物を生み出し、それを栽培しているわけです。
ものすごく不自然なことだと思います。
2008年の映画『モンサントの不自然な食べもの』(予告編 1分55秒)公式サイトはこちら
農の分野に限らず、グローバル企業や大企業、国がメリットばかりアピールし、大衆に対して大規模に推進されるものは、安易に信用しないほうがいい、と思っています。
実際、過去も、また今現在も多くの薬害がおこっています。
自分や大事な人を守るためにも、ひとりひとりが関心を持ってほしいと思っています。
2012年の映画『世界が食べられなくなる日』(予告編 1分43秒)公式サイトはこちら
グリホサートのことについては、以前、コラム「はちみつとミツバチとオーガニック」にも書きましたので、ご興味がありましたらご一読ください。
ともあれ、はちのわのはちみつからは、幸いグリホサートもその他農薬(ネオニコ含む)も検出されませんでしたので、安心してお召し上がりいただけたらと思います。