巣箱考[日本の巣箱・1]

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今週は寒いです!
ここ数日、日中も氷点下という日が続いています。
ミツバチたちはそろそろ育児開始の頃のはずですが…
巣箱を開けることはできないので、どうなっているかなぁ…と落ちつかない気持ちで過ごしています。

ニワトリ小屋にできたつらら

さて、前々回の巣箱の話の続きです。

養蜂を始めて、日本の巣箱を使用するうちに、「重い」ということの他にも疑問に思うことがいろいろと出てきて、それについて昔、養蜂仲間と話をしたことがあります。
その際に仲間の見解で「なるほど」と思ったのは、現在の日本の巣箱は移動養蜂を前提として作られている、ということでした。
そう考えると納得できる点が多いです。
ということは、その移動養蜂のために工夫された点は定飼養蜂にとっては必要でないか、むしろデメリットになる可能性もあるのでは?と思いました。

日本の巣箱で気になったポイントを挙げてみます。

  1. 底と本体
  2. 換気窓
  3. 継箱の「ハカマ」
  4. 板厚

1.底と本体

日本のラングストロス巣箱は底と本体が一体となっていて、「単箱」と呼ばれます。
持ち運びのしやすさが重視されたのだと思われますが、底に落ちたダニを目視するとか、掃除をする際には都合があまりよくありません。

海外の基本的なラングストロス巣箱は底と本体が分離しており、本体と継箱の区別はありません。
また底板(Bottom Board)にはScreenedとSolidがあり、Screenedには金網がはってあり、落ちたダニが金網を通過してその下の引き出し板(油や粘着シートなどで、ダニが巣に戻らないようにする)に残るようになっていて、ダニのチェックや駆除の際に便利です。
Solidは通常の板の底板です。

screened bottom board(MANNLAKE
solid bottom board(MANNLAKE

2.換気窓

日本の巣箱の前面および後面には、換気窓がついています。
これは巣箱を長距離移動させる場合に、ミツバチが興奮して巣箱内の温度が高まり蒸殺されてしまうのを防ぐためのものです。
種蜂を購入する際は、業者さんから宅配便で送られてくるか、あるいは受け取りに行くことになりますが、その移動の間にも必ず換気が必要なので、換気窓を開けた状態にします。
木の扉を下にスライドさせることで、巣門が閉じると同時に換気窓が開く仕組みになっています。

移動後はミツバチが落ち着いたら巣門を開け換気窓を閉めます。
そしてその後ずっと定飼する場合には、換気窓を開けることはまずありません。
数年前に、養蜂初心者の方が夏に換気窓を開け放しにしているのをたまたま見たことがあります。
ミツバチが暑いだろう、という心配りからでしたが、それはNGであることをお伝えしました。
そこまで開放してしまうと、ミツバチが巣箱内の温度を保つことが難しくなります。
換気窓は、頻繁に巣箱を移動させるような場合には便利だと思いますが、そうでなければ必要ないのではないかと思います。

はちのわのミツバチたちは、換気窓を閉じた状態でも、換気窓の金網を内側からプロポリスで塞いでしまっていました。
寒冷地ということもあり朝晩冷えますし、隙間風が寒かったのでしょうか?
結局、換気窓部分を詰めもので塞いで、木の扉も上げた状態で釘でしっかり打ちつけスキマのないようにして使用していました。
同様に、巣枠の上に敷く麻布も、ミツバチがプロポリスで全面をコーティングしてしまい、夏はベットリと巣枠上に貼り付いてしまい、はがすのに一苦労でした。
私も最初の頃は、換気がよいほうがよいだろうと思って、換気口が二箇所の蓋に、わざわざもう二箇所穴を開けて換気口を追加したりしていましたが、少なくともここの気候においては不要なことだったようです。
飼育する場所の気候にもよるとは思いますが、ミツバチにとって過度な通気は迷惑なのかもしれません。

海外の巣箱には換気窓はついていません。
移動させる場合はどうしているのでしょうか?それは調査不足で分かりませんが、調べてみたいです。
ただ、移動の機会が少ないのであれば、例えば移動させる時だけ上面を金網で蓋するなどで対応できそうに思います。

志水木材さんの巣箱 (c)志水木材

3.継箱の「ハカマ」

日本の継箱には「ハカマ」がついています。
これも移動時に巣箱本体から継箱がずれないようにするためについているのだと思われます。
しかし、内検時の大きな悩みが、下ろした継箱を単箱の上に戻す際に、ハカマの内側に入り込んでしまったミツバチを、どうしても潰してしまうことでした。
ブチブチブチッとやってしまうたびにつらくて、「ごめんなさい、ごめんなさい!」と言いながら作業していました。
毎回かなりのストレスを感じていて、「どうにかならないか…」と悩んでいました。
空いている巣箱をひとつ用意して、継箱を降ろす時に逐一その空き巣箱の上に置くようにする、などしたりしましたが、なかなかに面倒でした。

海外の巣箱は先述のとおり、本体と継箱の区別がなく、底板の上に、木枠状の巣箱をただ置くだけの形になっています。
「ハカマ」もついていません。
ずれたりして危なくないのかな?ということは疑問に思い、オリジナル巣箱を考える時も頭を悩ませたのでしたが、結論として、少なくとも定飼ならばハカマはなくても大丈夫という結論に至りました。
なぜかというと、ミツバチがプロポリスで継ぎ目をくっつけてしまうことが分かったからです!
移動時に固定せずにガタガタ車に揺られたりしたら厳しいと思いますが、普段の作業中などに、ちょっとやそっとでずれるようなことはありません。

日本
海外

4.板厚

日本の巣箱の板厚は業者さんによっても異なると思いますが、大体15mmくらいと思います。
以前購入していた志水木材さんの巣箱組み立てキットはサワラ材でとてもよかったのですが、板厚は16.7mmでした。
7枚巣箱の板厚は12mmでした。
これも、軽量化を目的としてそうなっているのかなと思います。
ただ、板が薄いほど、断熱性・保温性に欠けるため、寒冷地での養蜂にはもっと板が厚いほうがよいのでは…と思うようになりました。

対して、海外の巣箱では、板厚はだいたい20mmくらいのようです。
DIYしている人も多いようですし、人や地域によっても違うのだとは思いますが、板厚は3/4inch(約19mm)以下であってはいけない、という記述もありました。
私がオリジナル巣箱を作成するにあたって最も参考にしたカナダの巣箱は0.875inch(約22.2mm)でした。
はちのわの巣箱では、最初は25mmあったら安心かなーと考えましたが、重くなりそうなので結局は20mmにすることにしました。

(余談ですが、海外の巣箱を調べるにあたって、単位が慣れないinch表示なので、mmにいちいち換算するのが面倒でした…)


と、日本の既製品の巣箱について感じた疑問は主に以上のような点です。

ミツバチは自然の中では、木の空洞などに巣を作ります。
ニホンミツバチがお墓の中(骨壷をいれる所)に巣を作ってしまうこともあると聞きました。
屋根裏に作られたニホンミツバチの自然巣はみたことがありますが、セイヨウミツバチは日本の自然にはいないので(分蜂したセイヨウミツバチがむきだしで木に営巣してしまっているのは見たことがありますが)実物はみたことがありません。
ただ、木のウロなどだと、板厚に相当する樹木そのものの厚みはかなりありますし、断熱性、通気性は自然と保たれているのだと思います。
ミツバチがなるべく自然に近い状態で快適に過ごせる環境を再現してあげられるといいんだろうなと思います。

日本の巣箱が、いつから今のような形に落ち着いたのかは不明ですが、何か経緯があるのでしょう。
以前、台湾の養蜂の様子の動画をみた際も、日本と同じ形のものを使用していたので、アジア圏で発達した形なのかな?とも思います。
ただ、中国のある動画では、換気窓がなく、底板も別になっているタイプのものが使用されていたのも見たので、アジア圏全体がそうというわけでもないかもしれず、発生元はどこなのかなーというのは分かりません。

そもそも、日本にセイヨウミツバチの養蜂がはいってきた当初、明治時代の巣箱はどんなだったのかな?と気になりました。
日本の巣箱の変遷について書かれた本などがあれば読んでみたいものです。
自分で研究するつもりもないのですが、ちょっと調べてみたら面白かったので、話が横道にそれてしまいますが次回にご紹介したいと思います。