この冬は、前回の冬よりも気温が低いです。
1月に入って日中も氷点下の日が多く、雪もよく舞うように思います。
-10度前後はざらといった状況です。
気象庁の記録を見ると、今年に入って最低で-13.8度まで下がっています。
ということは観測地点より標高の高いここはもう少し低いはずです。
ここに拠点をかまえてから、-16度までいったことはあるので、いわゆる普通の気温ではありますけれども…
諏訪湖では、4年ぶりに御神渡り出現か?と期待が高まっているそうです。
キーンと冷たい空気の中、シーンと静まりかえった巣箱をながめていると、「ミツバチ、生きてるかな…」と、ついよくない想像が頭をもたげてしまうのですが、悪いことは考えないように!とつとめてます。
とはいえ、年初にやっと日中少し気温が上がった日があったので、ミツバチの様子を上から(巣箱の上部に保温・断熱のためのボックスを置いており、そこから中の様子がちょっと見られるようになっています)チラッとのぞいたところ、みんな、生きていました!
「ここはダメかなー…」と思っていた群を、あきらめ半分でのぞいたところ、思いがけずがんばっていて、「じゃましないでよ!」と攻撃されてしまいました。
びびりましたが、うれしくもあり。
また後日、巣箱内に耳を澄ますと、気配を察したのか、ブブブブ…とミツバチたちのざわめきが聞こえてきてほっとしました。
太陽が出て少し温まると、チラホラと外に出てきてウンチをしたりしてまたほっとしましたが、雪の上に降りてしまい凍えてしまうのが心配です。
だいぶ日が長くなり、太陽の光はまぶしくて春の兆しも感じられます。
でも暦は大寒。どうか乗り切ってほしいです。
ミツバチの産卵育児が止まる冬に、ダニにとどめのワンパンチをします。
はちのわでは、冬の対策にシュウ酸を使用しています。
シュウ酸は自然界に存在する成分でほうれん草などに、そしてはちみつにも微量含まれるものです。
食品添加物としても認められていますが、シュウ酸を購入する場合、扱いとしては劇物です。
ダニ対策に、天然成分であるシュウ酸やギ酸を使用することは、海外ではオーガニックな方法として一般的で、製品としても販売されているのですが、日本では動物用医薬品として承認されていません。
なぜかというと、承認を受けるためには多くの試験が必要で多額の費用がかかるため、その投資額と利益とが釣り合わないから、だそうです。
ということは、残念ですが当面承認される見込みは薄いわけです。
しかし、現在日本で承認されている薬剤を漫然と使うという対策では、オーガニックな対策という面では言うに及ばず、ミツバチをダニから守ることは難しいのはもはや明確です。
お上におとなしく従っていても、大事なミツバチを守ることができないので、自分で考えて、決めて、動くしかありません。
公式なインストラクションもないので、自分でよくよく情報を調べて注意深く行います。
何があっても自分の責任ですが、それでいいと思います。
もちろん、提供するはちみつに万が一にも影響がないようにすることも重要です。
今は冬なので採蜜するはちみつもなく、心配はないのですが。
そういうわけで、シュウ酸の使い方も道具も、自分で調べて調達しています。
(上の写真のアメリカ製ヴェポライザーは数年前に入手はしていたのですが、当時使っていた日本の一般的な巣箱では巣門に入らず使えないことが判明。宝の持ち腐れ状態でした。オリジナルの巣箱にしたら使えるようになりました。)
今まで滴下という方法でやってきましたが、気化での処置は少々ハードルが高く感じ未経験でした。
でも昨秋、ダニ大被害に直面し、より効果が望めそうな気化にトライしました。
効果を感じました。ただこの方法は、けっこうな手間と時間がかかることも実感しました。
そうしたところ、イギリスの養蜂家の方が、ガスバーナーにつけてシュウ酸を気化させ、スピーディに処置できる器具を作って売っていらっしゃるのを知り、海外からの注文も可能だったので、購入してみました。
海外から直接何かを買うというのも、やり慣れないことだったので最初の頃は緊張したものですが、大丈夫になってきました。
日本でも、もっと進んだ養蜂の情報や道具が、普通に手に入るといいんだけど…と思わずにはいられないのですが。
まずは自分ががんばるしかないです。
シュウ酸はミツバチには害はないというものの、人間は、特に気化したガスを吸い込むと肺をやられるそうで、処置時にはガスマスクにゴーグル、手袋という、ものものしい出で立ちでのぞみます。作業中は緊張します。
はじめて気化をした時には、モクモクとたちのぼる煙に、「ほんとにこれ、ミツバチ大丈夫なのかなぁ…?」と不安がよぎりました。
しかし、処置後のミツバチの様子を見てみると、何事もなかったようにケロッとしていたので、ホッと胸をなでおろしました。
道具をうまく使いこなすのも慣れが必要ですが、この処置法がうまく身についたら、ダニ対策にひとつ大きな武器が得られます。
また、薬剤を使わないダニ対策法のメインとしては、ミツバチの産卵が盛んな春から夏にかけて、オスの蜂児を羽化前に取り除くことです。
ダニはオスの蜂児をより好むからです。
昨年は、取り除く作業が後手後手になって羽化させてしまったり、ついかわいそうと思って見逃したりしたせいで、ダニが増えたと思います。
オスには気の毒ですが…今年はしっかり、やります。
化学合成のダニ駆除剤については全否定するつもりはないですし、適正に使用すれば問題はないと思います。
また緊急時には、ミツバチを救ううえで即効性が期待できるので、使用する選択をする場合もあると思います。
ただ、使い続けることによってダニに耐性が生じ効果が無くなる可能性や、長期的に見てミツバチや巣の環境などへの影響が疑問なので基本的には使わず、いわゆるオーガニック、と言える手法で対応するようにしています。
しかし天然の成分だから安心ということも無いというのも事実だと思います。
天然の毒でも毒は毒ですし、何にせよ過剰な量ではいいことはないはずです。
ただ、自然界にない成分か、ある成分か、ということだと、ある成分のほうを優先して使いたいなと思います。
シュウ酸はダニに耐性が出ないしミツバチにも悪影響はない、とされていますので、これからもうまく使っていこうと思いますが、これだけに頼っていればいいかというとそういうことでもないのかもしれないと思います。
化学合成の薬剤を使わない対策を、いくつかしっかり自分のものにしておければ安心なので、今後も模索していきます。
従来は、ミツバチを越冬させるには、暖地に連れていくのが望ましいとされてきました。
私もこの地で養蜂を始めた当初は、「ん?これは…寒すぎるのでは…」と後悔の念が頭をよぎったりもしました。
暖地の蜂友のご厚意に甘え、ミツバチを置かせてもらったこともありました。
しかし経験を重ねて、寒くてもミツバチさえ元気ならば越冬は難しくない!という確信を得ました。
そこへきて、最近の養蜂界のトレンド(?)としては、むしろ寒地で越冬させたほうがよい、という話も出てきました。
暖かい場所だと、女王蜂の産卵が止まらないため、蜂児に寄生して増殖するダニの発生も途切れないためです。
ミツバチは本来、寒さに適応した生き物であるそうです。
また産卵育児が停止することでダニの発生も途切れることになります。
確かに、冬に産卵が停止するのは寒いゆえのメリットだなとは思っていたこともあり、この場所を選んで間違いではなかった…むしろよかったのかも…?とニヤッとしたりしています。
とはいえ、大前提は「ミツバチが元気である」ということ。まさに「元気があればなんでもできる!」です。
連日、天然の冷凍庫状態、人間的感覚からするとやはり「大丈夫かなぁ…」とついつい思ってしまいます。
きっと大丈夫、と信じて春を待ちます。
オンラインショップにて、本数は少ないのですが初夏のはちみつ100gを再び販売開始しました。(→完売しました 2022.2.3)
また、「お客様の声」に、新たにいただいたご感想を掲載しました。
応援のメッセージやご感想に、とても元気づけられています。
ありがとうございます!