乳児ボツリヌス症について

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生後6ヶ月の赤ちゃんが、乳児ボツリヌス症で死亡するという悲しい事故が起きてしまいました(初の死亡例)。
赤ちゃんは離乳食として、生後4ヶ月頃からはちみつを混ぜたジュースを与えられていたそうで、原因はそのはちみつということです。
1歳未満の乳児にははちみつを与えない、ということは、一般的な認識と思い込んでいましたが、必ずしもそういうわけではなかったのだなということ、また、では、なぜいけないのか?はちみつだけがだめなのか?ということは、分かっていたつもりでも明確には説明できないことに気づいたので、これを機に調べて整理し、はちみつが悪いような誤解は無いようにしたいと思いました。
【ボツリヌス菌】
●土壌中に広く存在する菌
●通常は、芽胞(がほう)とよばれる、耐久性の高い休眠状態で存在し、発芽に適した環境(空気に触れていない、水分、栄養分がある)になると発芽し増殖する。
●ボツリヌス菌の芽胞はかなりの高温に耐えるため、通常の加熱調理では殺菌が難しい。(120℃で4分、100℃で6時間以上の加熱で死滅。一般に流通している加熱処理されたはちみつでも、ここまで高温をかけられていることはありません。)
【乳児ボツリヌス症】
●生後1年未満の乳児がボツリヌス菌の芽胞を経口摂取した結果、腸管内で菌が発芽・増殖し、産出された毒素によって発症する。
(大人が芽胞を摂取しても腸内の微生物等によって増殖が抑えられますが、離乳前の乳児は腸内環境がまだ整っていないため、ボツリヌス菌に抵抗出来ないのです)
なお「食餌性ボツリヌス症(ボツリヌス中毒)」と「乳児ボツリヌス症」は別のもので、前者は、すでに食品中でボツリヌス菌が発芽増殖し、その毒素そのものを取り込むことによって発症する食中毒で、大人でもなります(自家製の長期保存食が原因となりやすいそうです)。
【乳児ボツリヌス症の感染源】
日本では、1986年に輸入はちみつが原因となったのが初発症例(これを機に当時の厚生省が「1才未満の乳児にはちみつを与えないように」と通告。はちみつに表示されることになりました。)
自家製の野菜ジュースや井戸水が原因と推定された症例もあります。
コーンシロップや黒砂糖等にも芽胞が含まれている可能性があります。
土壌に広く存在する菌のため、避けるべき食品を限定することは難しいですが、乳児ボツリヌス症の予防には、はちみつに限らず、芽胞が含まれる可能性のある食品の摂取を避ける必要があるということです。
なお、過去、乳児ボツリヌス症の原因となった菌の型は、国内には稀な型であり、海外で汚染された輸入食品が原因になった可能性が考えられるそうです。

乳児にはちみつを与えると必ず発症するとか、はちみつには必ずボツリヌス菌の芽胞が含まれている、ということでは決してありませんが、はちみつは、ミツバチが自然界の花々を巡って作った生の食品である、という前提は頭においておきたいことだと思います。
亡くなった赤ちゃんのご冥福をお祈りします。

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