今年は、熊が人を襲ったというニュースがたびたび耳に入ってきます。
確実に件数が増えている感がありますし、住宅地で人の目の前で…など、今まで聞いたことがないような状況での事故が増えている気がします。
熊に襲われて命を落とされてしまったり、怪我を負ってしまった方々、どれだけの恐怖だったか想像も及びません。
そして、襲った熊は、処分(射殺など)されます。
致し方のないことだとは思います。
しかし、母熊が人を襲ったために、一緒にいた子熊も、将来的に人を襲う可能性があるので殺された…というようなことを聞くと、あまりにつらすぎて、どうしたらよいのかわからなくなってしまいます。
こちらの地域でも、熊の出没情報が何件がありました。
毎年数件はあるものの、はちのわの養蜂場から1km以内のところでも足跡が見つかるなど、緊張が走りました。
養蜂においては、巣箱が熊にあらされるということは珍しいことではないので、注意喚起がされます。
ここで養蜂を始めた頃は「ここまでは熊は来ないよ」と言われたのですが、もう、分からないなぁ…と考えてしまいます。
電柵を設置する、ラジオをかけておく、などの対策はしていますが、はち合わせないことを祈るばかりです。
なぜ、熊と人がこのような悲しい衝突を起こしてしまうことが増えたのか、の原因については、もちろん気候が変わったことなども影響しているとは思いますが、基本的には人間が、熊(やその他の生き物たち)がもともと住んでいた森を破壊し、熊たちが安心して暮らせる場所が減ってしまったから、ということに行き着くと思います。
また、人間が、熊たちの生息する場所に足を踏み入れたり、安易に餌付けをしたりということもあるでしょう。
森の破壊には、開発行為も含め、広葉樹の森だったところを針葉樹の人工林に変えてしまったということもあります。
熊にしてみたら、生きるために山を降りるのは仕方のないことなのでしょう。
以前『羆嵐(くまあらし)』という本を読みました。
大正4年(1915)に北海道で起きた三毛別羆事件 (さんけべつひぐまじけん)について書かれたものです。
心底恐ろしい事件で、読んでいて震えあがりましたが、この事件の根本的な原因も、もともと熊が生息していた奥地を人間が開拓して住み始め、生活圏が重なってしまったことに端を発していました。
今後も、悲しい事件が起こるたびに熊を処分していくだけでは、人間にとっても熊にとっても、幸せな結果にはならないことでしょう。
野生動物たちが安心して住める自然を、人間が復活させるしか解決の道はないのでは…
…というようなことを考えていた折、友人から一冊の冊子をもらいました。
『クマともりとひと』
日本熊森協会さんが出している冊子でした。

この冊子を読んで共感しかありませんでした。
自分一人ではどうせ何もできない…と何もしないでいるより、少しでも、できることをしたいものです。
一人一人の力がたくさん集結すれば、その力は大きくなり、自然回復のスピードをあげることはできるはずです。
もう20年以上も前のことですが、イギリスを一人旅したことがあります。
目的のひとつは、ピーターラビットの作者、ビアトリクス・ポターさんゆかりの地、湖水地方を訪ねることでした。
彼女の住んでいたお家とヒルトップ農場、周辺の自然を見たかったのです。
イギリスでは19世紀に「ナショナル・トラスト」が設立されました。
市民の手で、大事な自然環境を寄付や買取で入手して守っていくという活動です。
ポターさんも自然環境の保護に力をそそぎ、湖水地方の土地を買い取り、亡くなったあと遺言により、16の農場と4300エーカー(※)以上の土地がナショナル・トラストに寄贈されたということです。
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※広さがイメージできないので、「東京ドーム何個分」か計算してみました。
1エーカー=63.6m×63.6m→4,047m2→1,224坪
4300エーカー=5,263,200坪
東京ドーム=14,220坪
5,263,200坪÷14,220坪=370.12
…と、いうことで、4300エーカーは東京ドーム約370個分でした。
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実際、とてもすてきな場所でした。
この環境は彼女のおかげでずっと守られるのだな…というのは大変な安心感でした。
こぼれ話としては、当時「口蹄疫」が流行っているとして、羊のいるエリアに立ち入ってはいけないなど制限があったのが残念でした…

現在、英国ナショナル・トラストは会員数540万人という大きな環境保護団体に成長しているそうです。
今回、日本にも「日本ナショナルトラスト」があるのを知りましたが…
「公益財団法人日本ナショナルトラスト」と「公益社団法人日本ナショナル・トラスト協会」があって、(財団と社団)どう違うのか?というのは調べきれていません。
「日本熊森協会」では、活動内容として森の買取や山の再生などを行なっているということなので、熊などの野生動物が生きられる森を取り戻すという目的としては近道のように思います。
月々1,000円寄付する人が100人いたら、年間120万円。
1000人なら年間1200万円。10000人なら1億2000万円。
サブスクひとつ分というくらいの気持ちで、寄付してもいいのではと思います。
もし、お金持ちの方で、何にお金を使ったらよいか分からない(実際過去に、そういう方がいました!)とか、遺産相続でもめたくない、というような方がいらしたら、思い切って全額寄付してはいかがかと思います。
きっと自動的に徳も積めて、天国にも行けるのではないでしょうか…?
自分がお金持ちじゃないことがとても残念ですが、何か一発あてて、そのお金でポターさんのように自然を買い取って守れたらなぁ…と思わずにいられません。