11月に突入です。
寒冷地にあるはちのわの蜂場では、例年11月からは越冬モードに入るため、越冬態勢は10月中にすべて整えるべく動きます。
ミツバチの冬支度も目処が立って、スズメバチの来襲もほぼ収束し、ほっとしています。
あとは、春から夏の間に使った巣箱その他の道具の汚れを洗い、こびりついたプロポリスなどを取り除き綺麗にして、バーナーであぶって殺菌しておきます。
巣枠も整理したりとやることがたくさんあり、なかなかゆっくりできません。
現在、紅葉もすすんで気持ちのよいお天気が続いているので「のんびりしたいなー」と思うのですが、いろいろなことをさっぱりと片付けて安心して冬に突入したいのであと一息とがんばっています。
この秋は暖かい日が多く、作業をするうえでは助かっています。
今年のミツバチたちは、元気に冬を越せそうな群、まぁまぁいけそうな群、心配かも…な群があり、心配な群は合同しました。
群を合同するということは、一方の女王蜂を亡きものにするということです。
また、2021年生まれの女王蜂もがんばってくれていたのですが、夏の終わり頃には産卵がかなり減っていて、3回目の越冬は難しいと判断してさようならをしました。
まいどまいど、女王蜂とさよならするのは申し訳なくつらいのですが、これはもう致し方なく…
いくら嫌でもやるしかないので、「やるしかないんだ…!」と思いながらやっています。
殺すことができないので、「ごめんね…」と言いながら数匹の働き蜂とともに外に出し、どこかへ飛び立っておくれ…と放置しています。
弱群を合同して、今それなりにミツバチの数がいても、一旦ダニ被害で体力が低下していると、どんどん数が減ってしまう可能性があり、どうなるかな…と少々心配です。
来年はもっともっとダニ対策に気合をいれなければと思います。
夏期に女王蜂に産卵させない期間を作るというダニ対策法があります。
女王蜂を3週間王カゴに閉じ込めるのですが、かわいそうな気がしてやらずにいました。
しかし無蜂児状態を作るというのは、ダニを減らす確実な方法だと思うので、来年は、かわいそうとか言ってないでやるべきかもと思い直しています。
後々ダニが増えることのほうがよっぽどかわいそうだと悟りました。
特に前年生まれの女王蜂には実行したほうがいいなと今年の状況を見て思いました。
話は変わり、ニワトリのことなのですが…
1週間ほど前から、やたらと羽が抜ける子がいて、病気かな…と心配になったのですが、ふと「換羽」という言葉を思い出し、調べてみたところ、やはりそのようでした。
鳥は生理現象として年に1回〜数回羽が生え換わるそうで、ニワトリは主に秋におこるそうです。
それにしても1羽だけとは?とさらに情報をあさってみると、一律に起こるわけではなく、たくさん生え変わる子、軽度な子、などマチマチなのだそうです。
youtubeでニワトリの換羽の説明をアップされている方がいて、よく理解できました。助かります。
1ヶ月ほどで生え変わり完了だそうですが、今、古い羽がどんどん抜けて、部分的にハゲハゲになっています…
ハゲハゲのところには何かトゲトゲと出ているのがナゾだったのですが、これが新しい羽らしいのです。
筆毛というそうで、これがいずれ開く?らしいのです。
しかしなんともボロボロな見た目でかわいそうになってしまいます。
これから寒くなるというのに、大丈夫だろうか?と心配になりますが、見守るしかないとのことで…
サポートとしてはタンパク質多めの食事にするとよいということで、煮干や豆類などを与えてみています。
なお換羽期間中はは産卵はお休みのようです。
換羽が起こっているのは、もともと羽に水玉のように白い模様があったので「たまちゃん」という名前にした子です。
6羽の中で一番初めに産卵を始めた子です。何か関係があるのでしょうか。
それにしてもです。
もし私がニワトリを飼っていなかったら、「換羽」など知らずにいたでしょうし、こんなハゲしい見た目になるなんてことも知らなかったでしょう。
その知識不足の状態で、もし他所で飼われているニワトリを見て、こんなハゲた子がいたら…
きっと私は「わっ、かわいそう!」「病気?」「飼い方が悪いのでは?」「いじめられてるのかな?」などと、絶対に思っただろう自信があります。
そして飼い主さんを責めたくなったでしょう…無知ってこわいですね。
ちなみに「換羽」かな?と思ったのは、養鶏の現場では「強制換羽」ということが行われると養鶏の本(『自然卵養鶏法』中島正 著)に書いてあったのを思い出したからでした。
「強制」があるということは強制じゃない換羽もあるのかな?と思ったのです。
ちなみに「強制換羽」とは簡単に言うと、ニワトリを10日間ほど絶食させることにより、換羽を起こすことです。
そうすると、その後ニワトリが若返ったようになり、卵の質が改善されたり、低下していた産卵数が向上したりするそうなのです。
自然の換羽にまかせているとニワトリたちの状態が不揃いになり、経営的な問題が出るそうです。
びっくりですし、絶食って!ニワトリかわいそう…と思ってしまいました。
私は自家用の卵がもらえればよいだけなので、そこまでしなくてもいいかなと思っています。
というか、絶食させるなんてかわいそうで、できる自信がありません…。
しかし養鶏家の立場からすると、質のよい卵を長く多く採るためには必要な技術なのだろう…と思います。
先日、ほぼ初めて話をした方に、自分が養蜂をやっている、と伝えた時のことです。
「砂糖水、やってるんでしょ?」と嫌味っぽく言われました。
(…はぁ…どこから説明したらよいのか…)と思いました。
「ここは特に冬が長いですし、通常は冬の間の餌をしっかりもたせるために、秋に砂糖水を与えて補充するんですが、今年はソバの蜜がたくさん入ったのでやらずに済みました」ととりあえずお話ししましたが、どうしてこんな言い訳みたいなことを言わなきゃいけないんだろう?と思います。
砂糖水を与える=悪、これが一般の人の感覚なのかもしれません。
以前も書きましたが(「ミツバチと砂糖水」)、ミツバチを増やしたり維持したりする上で餌として与える必要がある場面がある、ということです。
当たり前ですが採蜜期に与えたりはしません。
ミツバチの使うはちみつは残し、砂糖水も極力与えないですむように…とはちのわでもはちみつを採る量をセーブしています。
でも数年前までは、とにかく群数を増やすことに注力しており、蜜枠のストックも少なく、集蜜力のない小群を大きく育てる過程や、悪天候などで給餌が必要な場面も多々ありました。
シーズン中に給餌をした採蜜群のその後の採蜜はあきらめました。
現在は、増やした群から取り置いた蜜枠のストックも増えました。
増群の方針は一旦やめたこともあって、現状は余裕があります。
今年はソバ蜜が多く入って、越冬のための給餌もはじめてゼロとなりました。
でも、砂糖水を与えることは即ち悪、みたいなイメージは、勘弁してもらえないだろうか…?とは正直思います。
砂糖水ではちみつを作らせたり、はちみつを全て奪って砂糖水で置き換えるような養蜂家もいるのかもしれませんが…
そういう行為は論外としても、養蜂をする上で、砂糖水による給餌を「絶対に」しないことを目指すということが最善のことなのか、また花の少ない春先などに給餌によって産卵を促し建勢を図るといった一般的な養蜂のテクニックも否定されるのだろうか、という疑問は私の中で未解決です。
このトピックについては、また自分なりに考えて改めてまとめてみようと思っています。
以前紹介したはちみつ療法の本(『自然療法はハチミツから』﨑谷博征/有馬ようこ著)にも、選ぶはちみつの条件として「砂糖水を与えていないこと」を挙げていました。
ハチミツの収穫量を増やすため、蜜蜂に餌として砂糖水やトウモロコシなどから人工的に作るブドウ糖果糖液糖といった甘味料を餌として与えている場合があります。蜜蜂たちは自分たちの食料としてそのシロップ甘味料を食べますが、必要以上の分は巣穴に貯蔵し始めます。結果として、ハチミツには花の蜜だけではなくシロップが混じってしまう恐れがあります。
『自然療法はハチミツから』p.160
ハチミツは蜜蜂の活動と環境に左右される食べ物です。残念ながら寒い季節が訪れる地域で、養蜂を行なっている場所が森ではないとすると、注意しなくてはなりません。冬には花が咲かないので、蜂はいなくなります。蜂のためのシロップバーが販売されていることからもわかるとおり、”安定的”に花ハチミツを採取しているメーカーであれば、それはシロップ入りかもしれません。冬は蜂の食べ物としてはちみつがあるのです。(以下略)
養蜂をしている立場で読むと、全体的にいろいろモヤモヤしてしまう文章ですが、反論はとりあえず置いておきます。
ただ何回読んでも意味がわからないところがあるのです。
冬には蜂はいなくなる…とは?スズメバチやアシナガバチなどはいなくなりますが…
また、冬期にシロップではちみつを作らせ採蜜する珍奇な養蜂家がいるというのでしょうか…?
どういうシチュエーションを想定しているのかよく分かりません。
またその本では、条件として「抗生剤・殺虫剤を使っていないこと」も挙げていました。
それは基本同意ですし、はちのわでもその方針でやっています。
ただ、やっぱり「???」な文章が…
蜜蜂に寄生するダニが世界中で猛威を振るったため、ダニを退治するために固形殺虫剤を巣箱の中に設置する養蜂業者もいます。
『自然療法はハチミツから』p.161
故意ではなくても、周囲に農薬や抗生剤をつかった作物があるような環境だと、その影響がないとは言えません。実際、中国産やヨーロッパのハチミツから抗生剤が検出されているニュースやリサーチも明るみに出てきました。
各国によって、蜂の天敵は異なりますが、その昔から蜂が生き延びてきていることを考慮すると、不自然な薬剤の投与が必ずしも必要だとは考えられません。昔から使われている殺虫剤に蟻酸があります。それさえ必要なのかどうかは人間側の考えでしかありませんが、抗生剤の投与では蜂の生体における被害は異なります。また抗生剤が混入したハチミツを、私たちも摂取することになることを忘れてはなりません。
オーストラリアやニュージーランド、またロシアにはこの寄生ダニがいません。また、寄生ダニに強い蜂も存在します。
やはり読んでいてよく分からずモヤモヤします。
トウヨウミツバチとセイヨウミツバチ、ヘギイタダニとアカリンダニを区別できていないのかも?
また、それぞれのダニが蔓延した経緯や現状をご存知ないのかもしれません。
なお抗生剤はダニ対策というより主に腐蛆病の予防対策として与えられます。
また与える際にははちみつに残留しないよう用法用量が定められているので、必ず残留しているとするのは言い過ぎかなと思います。(ただ、抗生剤は与えないに越したことはないとは思います。)
「その昔から…」と言っても、セイヨウミツバチはもともと日本にはいなくて、日本の自然では自力では生き延びられません。
また、昔と今では、ダニの蔓延具合もダニのタイプも違うので、そんな簡単に言われてもなぁ…(T_T)という感じです。
養蜂家たちがどれだけダニに苦戦していることでしょうか。
はちのわがノンケミカルで養蜂するのにも、たくさん試行錯誤し失敗もしましたし、今もそれは継続中です。
ダニに強いミツバチが簡単に入手できたらどんなに楽でしょう…どこで買えるか教えてほしいです。
自家でダニに強い血統を作っていくのに何年かかるでしょうか。
ダニ耐性のあるミツバチを作る研究が、今海外で行われている状況だと認識しています。
この文章を書いた方は、ミツバチや養蜂についてあまり深い知識はない、少なくともご自分で養蜂をされたことはなさそうだなということが分かります。
けれど、消費者のほとんどもミツバチや養蜂についての知識なぞないことが普通なので、立派な本にこのように書かれていたら、「へぇー、そうなのかー」と思いますよね。
それで知った気になり、養蜂家に「砂糖水、やってるんでしょ?」って言ってしまう、というようなことが起きるのかもしれません。
私も養蜂をやっていなかったらそうだったかもしれません。
やってみないと分からないこと、経験を積んで分かることがあります。
私もニワトリのことはもちろん、養蜂のことも、まだまだ分かっていないことが多いです。
私の知識も、はちのわの状況も、時間とともに変化していきます。
こういう文章を書いていても、何か間違ったことを書いているかも、と不安にもなります。
ただ、今回ニワトリの換羽を見て、現場を知らず、自分でやったこともないことに対し、中途半端な知識で安易に生産者を非難するようなことはしないように気をつけよう…と自戒した次第です。
改めて詳細を書くつもりですが、はちのわのはちみつを、残留農薬の検査に出しました。
はちのわでは抗生物質も、化学合成のダニ駆除剤も使用していません。
この検査は周辺環境による影響の有無の確認となります。
結果、グリホサートおよびネオニコ系含む農薬131種類について全て「検出せず」でした。とりいそぎご報告します。
数年前にも一度検査に出し、全て不検出でした。
ただ、検査費用が高額なため、毎回行うことは残念ながら難しいのです…今回の結果をご参考にしていただければと思います。