はちのわ日誌

ウメばあさん

2019年生まれの、「ウメ」と名付けた女王蜂がいます。
2020年、他の群が調子を崩したり、いまひとつだった中で、ウメ群はまさに群を抜いて勢いがあり、希望を与えてくれた女王です。

3群から始まったはちのわのミツバチたち、今年は20群を超えました。その8割ぐらいはウメ女王の娘や孫女王の群です。
今のはちのわの賑わいはウメ女王のおかげといってもよいでしょう。

例えば、異なる血統も必要と思って昨年業者さんから購入した女王蜂は、採蜜できるほどの群の勢いも出ないまま、いつのまにか姿を消してしまいました。(2020年生まれの若い女王のはずなのですが…)
高いお金を出して女王蜂を買っても、必ずしも強いわけではなく、女王蜂如何ではちみつの採れ高も変わるわけなので、勢いのある女王蜂は本当に貴重で重要な存在です。

しかしウメ女王も、3回目の越冬はさすがに無理かなと思っていました。産卵の勢いもなくなってきていました。
養蜂業では、毎年若い女王に人為的に交代させるのがセオリーなのですが、私はどうにもそれがつらくてスパッとできず、調子が悪くなければそのままにしています。
特に恩人(恩蜂?)であるウメ女王の最後は見届けたい…と見守っていました。

ある日、ウメ群を内検していると、隅の方に、立派な王台(新しい女王蜂が生まれる房)がありました。「更新王台」だと思いました。
働き蜂たちが、群の存続のために女王を交代させようと決めた時に作る王台です。
ということは、ウメ女王は死が近い(殺されてしまう)のかな、と思っていたのですが…

後日、新しく誕生した女王蜂とともに、なんと旧ウメ女王もいたのです。
女王蜂は1群に1匹というのが大原則なのですが、1群に新旧2匹の女王蜂がいることも稀にある、という話は聞いていました。以前はちみつコラム(『「女の一生」ミツバチ編』)にも書いたのですが、我が目で見たのは初めてです。
ツーショット写真を撮れればと思ったのですが、なかなか難しく…

産卵中の旧ウメ女王。羽が少し欠けているのが特徴
ウメの娘女王

無事に交尾飛行から戻った娘女王蜂が産卵を開始して、そろそろ旧ウメ女王もいなくなってしまうのかなと思っていたのですが、なんといまだ健在!
旧ウメ女王は、働き蜂たちに敬われているように見えます。
このまま3度目の冬を迎えるのでしょうか。ドキドキします。
(ちなみに先述のコラムには女王蜂の寿命は4、5年と書いていますが、そこまで生きることは実際にはなかなかないのではと思います)

そういえば、数年前、コラムを読まれたあるテレビ番組の制作会社さんからお問い合わせをいただいたことがありました。
有名な元予備校講師の某先生のバラエティ番組の題材として、女王蜂のことを取り上げたいということでした。
「群の存続に女王蜂が貢献しない場合(年老いて産卵力が落ちたり、体に欠陥があるなど)は働き蜂が女王蜂を殺すことがある」という点をクイズにしたいようでご質問いただきました。

知っていることや文献は誠心誠意お伝えしました。
ミツバチの生態に詳しい先生をご紹介できることもお伝えしたのですが、あまり深く調べるおつもりはないようでした。
そしてどうも、「働き蜂が女王蜂を殺す」という刺激的な点にばかり焦点をあてたい感じが伝わってきて、モヤモヤしました。
視聴者の「えーっ!」とか「へぇー!」とかの反応を得ることが目的なのですからそうなるのでしょう。

インタビューの打診もいただいたのですが、自分がその瞬間を目撃したわけでもなく、自分のようなペーペーが知ったようなことを言いたくないですし、ミツバチについて偏ったイメージが拡められるのはいやだと思いました。
また、発言が番組に都合のいいように切り取られる可能性もゼロではなく、偏った話の片棒を担ぎたくないと思い、お断りしました。
結局番組がどうなったのかは分かりません。

どこの誰か分からないような養蜂家に聞いたことだけで取材を完結させようとする姿勢や、ショッキングなことだけに焦点をあてようとする姿勢…お忙しいのでしょうが、どうなんだろうと思いました。
バラエティ番組なんてそんなものなのでしょうか…でもテレビの影響力は大きいのです。

テレビ(メディア)というのは、刺激的なことやショッキングなことで人を惹きつけ、誘導するものだとは思っていましたが、このことでその一端を実際に垣間見た気がしました。
テレビの言うことを鵜呑みにするのは本当にあぶないですね。
ミツバチの話くらいで済めばいいですけれど…

また例えば、毎年どこかで起こる分蜂(巣分かれ)騒ぎのニュース。
テレビは大体「ミツバチ大発生!!」と騒ぎ、街の人々がおびえる様子を映します。
あれでは何も知らない人は「わー怖い!危ない!」と思ってしまって当然です。
でも「大発生」したわけではないですし、分蜂群はとてもおとなしく、下手な手出しをしなければ刺されることなどまずありません。
怖がって殺虫剤で殺そうなどするほうがかえって大惨事になります。
春の風物詩くらいに思ってほしい自然現象です。
放っておけばいずれ飛び去っていきますし、養蜂家を呼べば、よろこんで捕まえに来て、一件落着です。

伝える側に学習能力がないのか、わざとなのか分かりませんが、毎年毎年、いい加減に正しい情報と知識を伝えてくれないものか!と思います。

昔はなんとなくテレビをつけてぼーっと見ていましたが、今はほとんど見なくなりました。とても快適です。
もちろんよい番組、好きな番組もあり、それは録画をして見るようにしています。

物事にはいろいろな側面があり、テレビで伝えられることが正しいわけでも、全てでもない。むしろ伝えられない真実がたくさんある、ということは常に念頭に置いておかねばならないと思っています。

閑話休題。

10月に入り、ぐっと気温が下がった…と思いきや、なにやら暖かい日が続いています。
さわやかな秋晴れ、気持ち良いのですが、例年よりだいぶ気温が高いようで、日中作業していると汗がしたたり落ちるほどで、それはそれで微妙な気持ちになります。
とはいえ、いつ寒くなってもよいように、冬支度にいそしむ日々です。

旧ウメ女王はあえて廃さずとも、いずれ自然に死を迎え、新しい女王に交代するのでしょう。
自分が手を下さなくていいんだと思うとホッとします。
働き蜂たちに、最後まで大事にされてほしいです。

しかし養蜂を円滑に営むためには強い群を維持しなければならないため、女王を交代させたり廃したりすることを完全に避けることはできず、毎度毎度、煩悶しています。

特に、この季節は、しっかり越冬できる群にするために弱い群は合同したり(弱いほうの女王蜂は廃さなければならない)、スズメバチをたくさん退治しなければならなかったり…。
オオスズメバチは見た目もコワイですが、羽音も重低音でめちゃコワイのです。
作業中に羽音が近くをかすめると体がすくみます。
キイロスズメバチなんてザコだと思えるくらいです。
でもスズメバチも家族のために一生懸命なんだと思うと、こちらの都合で命を奪うなんて…とへこみもします。
秋は、養蜂シーズンの中では最も憂鬱な季節かもしれません。
(と、もしかしたら毎年同じようなこと書いているかも…)

今年はオオスズメバチが例年より多く来ています

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